オタ福の語り部屋

オタクじゃない、俺はオタ福だ!

高齢猫に多い、甲状腺機能亢進症

今回は甲状腺機能亢進症』について説明します。

甲状腺機能亢進症とは甲状腺から出る甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで、身体に異常に起きてしまう疾患です。

犬よりも猫に多いです。

甲状腺がどのような役割をしているのか、そして甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるとどのような病態になるかをお話できればと思います。

 

【目次】

 

甲状腺ホルモンとは】

甲状腺の司令塔

視床下部という間脳に下に存在する中枢からTRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)が下垂体に送られます。

そのTRHを受け取った下垂体はTSH(甲状腺刺激ホルモン)甲状腺へ送ります。

そしてTSHを受け取った甲状腺甲状腺ホルモン(T3やT4)の合成を開始します。

甲状腺ホルモンが十分作られていると、視床下部や下垂体にもう作らなくていいという指令が送られます。これをネガティブフィードバックと言います。

 

f:id:otahukutan:20181015192040p:plain

甲状腺ホルモンの作り方

甲状腺ホルモンは甲状腺で作られています。

甲状腺で合成されるTG(サイログロブリン)のチロシン基にヨードが結合することで、甲状腺ホルモンは産生されます。

そして、作られた甲状腺ホルモンは血液中に放出されます。

甲状腺ホルモンにはT3とT4という2種類のタイプが存在します。

T3:いろんな臓器(肝臓・腎臓・筋肉)で作られる

T4:甲状腺でしか作られない

これらの性質を利用して、甲状腺の疾患を疑う場合は血中T4の検査を行うことが多いです。 

 

f:id:otahukutan:20181015193531p:plain

甲状腺ホルモンの働き

甲状腺の基本的な役割は『生体の代謝を活発にする』ことです。

甲状腺ホルモンはどんな臓器や組織にも影響を与えており、非常に大切なホルモンです。

体温の維持、蛋白や酵素の合成、炭水化物や脂質の代謝などに重要です。

 

各臓器での甲状腺ホルモンの役割

心臓:心拍数↑、心収縮の増強など

血液系:赤血球産生(血を作る)

骨格系:骨形成と骨吸収のサイクルを維持(骨が常に作り変えられ、新鮮)

胎仔期:神経や骨格を作る

 

甲状腺機能亢進症の概要】

 甲状腺機能亢進症とは文字通り、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されたことで生じる病気で、内分泌疾患です。

高齢(8歳以上)の猫でもっともよく見られます。

一方で、犬での発生は少ないです。

雌雄で性差はないです。

 

甲状腺機能亢進症の原因】

 一般的な原因は甲状腺の過形成および腫瘍です。

※過形成とは腫瘍ほど悪性の挙動を示しさないが、細胞が増殖したもの

 

腫瘍化した甲状腺からは視床下部や下垂体からの司令無しに甲状腺ホルモンの産生を行い、ネガティブフィードバックもガン無視して、産生します。

こういったホルモンなどの分泌能を持った細胞が腫瘍化したものを機能性腫瘍』と言います。

機能性腫瘍は良性腫瘍でも体にとっては有害であることがあるので、注意してください!!

 

f:id:otahukutan:20181015194954p:plain

甲状腺腫瘍のできる場所】

ほとんどは片側性にできます。

※片側性:甲状腺は気管付近に対に存在しているが、片方だけ腫瘍化すること

 

腫瘍の比率

対称性腫大:10~15%

片側性腫大:85~90%

 

甲状腺機能亢進症の症状】

甲状腺機能亢進症の症状は甲状腺ホルモンが過剰に出ることで現れる症状です。甲状腺ホルモンは『代謝を活発にする』ホルモンです。つまり、代謝が活発化することで見られる症状がほとんどです。

よく見られる症状6つ

①体重が減る

食べても食べても代謝が活発になるため、体重が減っていきます。脂肪分解が促進され、中性脂肪が減少していきます。

 

②たくさん食べる

エネルギー代謝が増大するので、お腹がすぐに空きます。結果、たくさん食べるようになります。

 

③性格の変化

交感神経の感受性をあげてしまうため、興奮状態が持続してしまいます。

興奮状態の持続によって見られる性格の変化

・落ち着きがない

・活動的になる

・凶暴性が増す

などが挙げられます。

 

④被毛の変化

過剰なグルーミング毛のサイクルが狂うことで、脱毛が起こります。

 

⑤多飲・多尿

心房性ナトリウム利尿ペプチドの分泌が亢進し、NaやKの排泄が促進され、利尿作用を示すため、尿がたくさん出る同時に、喉が乾くためたくさん水を飲むようになる。

 

⑥嘔吐や下痢

嘔吐:粘膜のターンオーバーの亢進

下痢:胃腸管運動の亢進

 

起こりうる合併症

肥大型心筋症

甲状腺ホルモンの作用によって心臓はβアドレナリン受容体の数が増加し、心拍数、新収縮力が増強されています。これが長期間持続することで、負担になり、心筋症を定するようになります。

 

全身性高血圧

これも、心筋症同様で心臓に負担がかかっているために発生します。

 

甲状腺機能亢進症の検査】

触診

首にできた甲状腺腫瘍は9割が触ることができます。

 

聴診

心拍数がかなり多く、頻脈になっています。

 

血液検査

①一般(CBC

多くの場合正常ですが、血液の活発な産生などによってPCVの上昇が見られることがあります。

 

②生化学検査

・ALPの上昇(75%):猫のALPは半減期が短いため、上昇しにくいですが、甲状腺機能亢進症の時はほとんどの場合上昇しています。

 

・AST・ALTの上昇(75%):肝酵素のマーカーです。

 

・BUN・Creの上昇:治療前は多飲多尿によって、腎機能障害が露呈していなくても、治療を開始してくると多飲多尿が抑えられ、実は腎機能障害があったなんて場合があります。

 

・血清T4・fT4濃度測定:T4のほとんどは甲状腺で産生されるため、T4の測定は甲状腺機能亢進症を診断するのに非常に便利です。

T4の中でもfT4(フリーT4)はより正確に診断できるとされています。

 

尿検査

甲状腺機能亢進症の症状は糖尿病の症状とよく似ているため、糖尿病を除去するという意味で尿検査を行います。

猫の糖尿病については→こちら

 

甲状腺機能亢進症の診断

臨床症状、頸部の腫脹、T4あるいはfT4の上昇で診断していく場合がほとんどです。

 

甲状腺機能亢進症の治療法】

外科的切除

外科的切除は根治治療として用いられる治療法ですが、いきなり切除するのは危険です。というのも甲状腺ホルモンが過剰に出ていたことで、腎不全が顕在化してなかった場合があるからです。

術後に隠れていた腎不全の症状が現れるなんてこともあります。

そのためにも次で説明するチアマゾールを4~8週間投与して、ある程度甲状腺ホルモン量を減量した後に切除を行うべきです。

 

甲状腺

日本では主にチアマゾール(メルカゾール®️)を使用します。

チアマゾールは甲状腺内にあるサイログロブリンヨウ素を取り込むのを阻害し、甲状腺ホルモンの合成を抑制するといった薬です。

詳しい作用や副作用については→『オタ福のお薬手帳』にて書いてますので、参考にしてみて下さい。

 

放射線ヨウ素療法←日本では未認可

ヨウ素同位体である放射線ヨウ素を用いた治療法です。

甲状腺ヨウ素を集める性質があります。この性質を利用して、放射線ヨウ素甲状腺に集め、甲状腺細胞を破壊しようという方法です。

侵襲度(身体への負担)も低く、副作用も少ないため、非常に優れた治療法です。

日本では法律の関係上、まだ使用することはできません。

 

食事療法 

ヨウ素の含有量を少なくした療法食です。

ヨウ素の摂取量を制限することで、甲状腺ホルモンの産生量に限界値を設け、産生量を減らそうとする方法です。

ヨウ素制限食といえば、ヒルズ・コルゲート社のy/dが有名です↓↓

 

 

【さいごに】

甲状腺機能亢進症について説明しました。

甲状腺機能亢進症は甲状腺ホルモンが過剰にでることで症状を示します。

その原因のほとんどは甲状腺の過形成あるいは腫瘍です。

治療法としては外科的切除や抗甲状腺薬、食事療法など、状況に応じて使い分けることになるでしょう。