オタ福の語り部屋

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犬で多い、『クッシング症候群』とは?

今回は『クッシング症候群』について説明する。

クッシング症候群とは別名、副腎皮質機能亢進症とも呼ばれる。名前の通り、副腎皮質の機能が更新し、それによって引き起こされる様々な病変をまとめた病気である。

人では比較的少なく、耳にすることは少ないが犬の場合かなり多いと思う。

クッシング症候群は見た目も特徴的で、わかりやすい。

クッシング症候群は内分泌系の疾患であり、症状を元に検査や診断方法、治療法をメインに話していこうと思う。

【目次】

 

【病態】クッシングはどんな病気なのか

クッシング症候群とは簡単に言うと体内で糖質コルチコイドが過剰になり、それによって様々な病変が起こる内分泌疾患である。

糖質コルチコイドとは

副腎皮質の束状帯から合成・分泌されるステロイドの一種である。

下垂体前葉から分泌された副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が副腎皮質の作用して、合成を促す。

糖質コルチコイドの作用

クッシング症候群を語る上で、糖質コルチコイドの作用の説明は避けられない。これを知っておけばほとんど、クッシングを理解したと言っても過言ではない。

とても基礎的な話になるが、どうぞお付き合い願いたい。

①糖上昇作用

・筋肉や脂肪を分解して、肝臓にグルコース産生を促す。

血糖値を上げる。

②抗炎症作用

・炎症カスケードのホスホリパーゼA2抑制作用により、炎症物質のロイコトリエンやプロスタグランジンの生成をブロックする。

・リソソーム膜を安定化させ、プロテアーゼという細胞を壊す物質を抑制する

・肥満細胞からのヒスタミン放出を抑制する。ヒスタミンはアレルギーやアトピーで症状を悪化させる原因物質である。

③許容作用

①の糖上昇作用をより促進させる作用をもつ。

④神経作用

・中枢神経の糖質コルチコイド受容体があり、糖質コルチコイドが欠乏すると神経過敏になる。

⑤抗ストレス作用

・ストレスを感じると下垂体からACTHが分泌され、糖質コルチコイドを作る。④の許容作用を活性化させる。

⑥骨密度減少作用

実は骨は常に破壊され、造られを繰り返している。これらは破骨細胞と骨芽細胞のバランスによって緻密に制御されいるのだが、糖質コルチコイドは破骨細胞の力を強め、重症例では骨粗鬆症になりうる。また、腸管からのカルシウム吸収も活性化させる。

 

糖質コルチコイドが増加する原因

では、何が原因で体内に糖質コルチコイドが増加するのだろう?

原因は大きく分けて3つある。

①下垂体性クッシング症候群(PDH)

下垂体が腫瘍化し、ACTHを過剰に分泌し、副腎に糖質コルチコイドを作るよう働きかけることで起こるクッシング症候群である。この下垂体性クッシング症候群が、ほとんどであり、約80~90%という報告がある。

下垂体腫瘍自体は良性のことがほとんどなのだが、ACTHを大量に分泌すると言った点ではかなり有害な腫瘍である。こういったホルモンを大量に分泌する腫瘍を機能性腫瘍という。

 

②副腎腫瘍性クッシング症候群(AT)

副腎皮質が腫瘍化し、ACTHの影響に関係なく糖質コルチコイドを過剰に産生するクッシング症候群である。これが原因となるクッシング症候群は約10~15%と報告されている。副腎腫瘍は悪性と良性で半々である。

 

③医原性クッシング症候群

ステロイド薬の過剰な処方により、体内の糖質コルチコイド量が上昇して起こる。これは炎症を抑えるために、ステロイド薬を乱用した結果起こるものなので、まめなモニタリングが非常に重要になってくる。

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【症状】クッシングは外見が特徴的だ!!

クッシング症候群の症状は副腎皮質から過剰に分泌されるコルチゾール(副腎皮質から産生される糖質コルチコイドのこと)によるものがほとんどである。 出やすい症状順に紹介していく。ほとんどがコルチゾールによる影響で出てくる症状なので、上記の『糖質コルチコイドの作用』をおさらいしておくと分かりやすいかもしれない。

多飲多尿(80~91%)

多飲多尿とは読んで字のごとく、『よく水を飲み、よくおしっこをする』という症状だ。クッシング症候群の場合、最もよく見られる症状である。

コルチゾールには抗利尿ホルモンと言われる尿を出す前に水分を体へ再吸収するよう促すホルモンを抑制してしまう作用がある。

これにより、水分の再吸収能が低下してしまい喉が渇く。この循環でおしっこしては水を飲むようになる。

 

脱毛(60~74%)

毛が抜ける。そのままだ。しかし、特徴としては『内分泌性脱毛』といって左右対称に抜けていくことを覚えておこう!

これはコルチゾールの影響で、毛根の休止期が延長するためである。

毛根というのは主に4つのサイクルで循環していることを知っていてほしい。

毛根は

成長期→退行期→休止期→成長初期の順で回っている。

・成長期:毛が伸びる勢いがもっとも盛ん

・退行期:伸びる勢いが低下する

・休止期:毛の成長は止まり、抜ける

・成長初期:休止期のあと、新たな毛を生やす準備をする

 ここの休止期が延長することで、新しく毛が生えにくくなり、抜け毛が目立つのだ。

 

腹部膨満(67~73%)

簡単にいうとお腹がたるんでくる。脂肪がついて太ってきたというよりは『たるんだ』という印象を受けるだろう。この理由もコルチゾールのせいである。

原因として、

1つは先ほどの多飲多尿の項で説明したように尿が膀胱に溜まってくることがある。

2つ目は筋肉が分解されるので、腹筋が弱くなり 、お腹がたるむからだ。

3つ目は腹部のもっとも大きい臓器である肝臓が腫れてくるからだ。

以上のことから、お腹がたるんで見えるのだ。

 

呼吸促迫、パンディング(30%)

クッシング症候群を患っている動物は『呼吸が荒く』なる。

その理由としては

筋肉の分解作用によって呼吸筋が弱くなっている

肺や気管が石灰化し、膨らみにくくなっている

・肝臓などの腹部の臓器が腫れており、胸腔を広げる邪魔をしている

以上の3点から呼吸がしにくくなるのだ。

 

その他

まだまだあげられる症状はあるが下のように簡単にまとめた。

皮膚の石灰沈着:骨を分解し、カルシウムが皮膚に蓄積する

筋力低下コルチゾールは筋肉分解する作用がある

多食コルチゾールによって、食欲が増加する

神経症状(PDHのみ):下垂体腫瘍が大きくなって脳を圧迫すると起こる

 

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【診断】クッシングの診断はフローチャートだ!

クッシングの診断方法はフローチャート式になっており、

まずクッシングかどうかの診断を行う

次に下垂体性か副腎腫瘍かの判別を行っていくというものだ。

では早速説明していこう!

①症状から疑え !

先ほど説明した【症状】に該当する場合はクッシング症候群を疑うべきである。

多飲多尿、腹部膨満、内分泌性脱毛などクッシングで高確率で見られる症状から当たりをつけていく。

 

②ACTH刺激試験で確証を得ろ!

クッシング症候群であるかどうかを診断するためにはACTH刺激試験を行う。

【方法】

ACTH刺激試験とは合成ACTHを0.25mg/頭で筋肉内投与し、1時間後に血中のコルチゾール値がどうなっているかを見る試験である。

 

【検査の仕組み】

この試験で何がわかるかというと、

通常体内のホルモンというのはバランスが取られている。つまり、増えすぎたり減りすぎたりすると正常値に戻すように体が働きかけるのだ。しかし、クッシング症候群などの内分泌疾患ではその調節機構が破綻している。

そのため、コルチゾールの分泌を促すACTHを投与すると通常の場合は調節機構によってコルチゾール値が低下する。一方で、クッシング症候群の場合は投与したACTHに関係なくコルチゾールを分泌し続ける。

 

【結果どうなるのか】

よって、結果として1時間後の血中コルチゾール値は高値のままになる。

 ただし、これで上昇するのは下垂体性の場合で85%、副腎腫瘍の場合で60%である。

また、低値になった場合は90%の確率でクッシングでないことが証明される。

 

では、上昇を示さなかった残りの下垂体性(15%)あるいは副腎腫瘍(40%)はどのように発見するのだろうか?

次のは低用量デキサメタゾン抑制試験(LDDST)である。

 

③殲滅作戦、LDDSTで逃げ道を塞げ!

この試験はクッシング症候群において必須の試験ではない。

『明らかにクッシングを疑う症状。でも、ACTH試験が陰性。』

そんな時に行う試験である。なぜなら、この試験は陽性を示す症例の95%の確率でクッシングを見つけられるからだ。

ではなぜ、最初からこれをやらないのか?

それは『めっちゃめんどくさいから』この一言に尽きる。

この試験中は

・決して興奮させてはならない

・ご飯もあげることはできない

・投与前、投与4時間後、8時間後に測定を行わなければならない

非常にめんどくさい(笑)

 

【検査の仕組み】

原理としてはごく少量のデキサメタゾン(0.01mg/kg)を静脈内投与し、先ほど同様に調節機構が働くかを見る試験である。

 

【結果】

クッシング症候群であった場合は調節機構が働かず、コルチゾールは高値を示したままになる。

 

④エコーで下垂体性か副腎腫瘍か見極めろ!

①〜③でクッシング症候群であるとわかれば、次は下垂体性クッシング症候群(PDH)副腎腫瘍(AT)かを鑑別する必要がある。

エコーで何を見るのかというと、副腎だ。病態の項目で使用した図をもう一度見て欲しい。

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PDHは正常な副腎に比べ、両方が大きくなっている。(約6~8mm)

一方で、

ATでは片方の副腎のみが大きくなっている。(約2cm)

この違いを超音波検査で描出できれば勝ちである。

 

⑤その他の検査

尿コルチゾールクレアチニン

クッシングではないこと証明する時に使う試験

高用量デキサメタゾン抑制試験(HDDST)

エコーでPDHとATの判断つかなかった時に行う試験

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【治療法】クッシングは治せるの?

散々ここまで話してきたクッシング症候群、どんな治療法があるのだろうか。

まず、治療はPDHとATで大きく分かれる。そして、2つが共通する内科治療についての三本立てで話を進めていこうと思う。

下垂体性クッシング症候群(PDH)

PDHの場合、根治治療となるのは『経蝶形骨下垂体切除術』である。

しかし、これは特殊な器具と熟練した手術チームが必要なため現実的ではない。

PDHは内科療法で症状をコントロールしていくのが、セオリーに感じる。

内科療法に関しては後述する。

 

副腎腫瘍(AT)

こちらはPDHと異なり、腫瘍化した方の副腎を外科的切除することが第一選択となる。切除後はもう片方の萎縮していた副腎が復活するまで、コルチゾールを打たなければならないが、それ以外は転移がなければ大丈夫だろう。

もし、転移や飼い主の意向により手術適応外であればPDHの内科療法の準ずる。

 

内科療法

トリロスタン(アドレスタン®️)

仕組み

トリロスタンは副腎皮質ステロイドホルモンを作るのに必要な酵素である3β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素を妨害することで、コルチゾールの産生を抑える。

 

特徴

・副作用が少なく、治療成績もいい

・他の薬と比べて高価な印象

トリロスタンは一生飲み続ける必要がある薬なので、副作用、値段ともに十分吟味したいところではある。

 

ミトタン(オペプリム®️)

仕組み

副腎皮質の束状帯と網状帯のホルモン産生細胞を攻撃することで、コルチゾールの分泌を抑える薬。

 

特徴

・副作用は大きく、再生不可能のように産生細胞を攻撃するので、壊しすぎないようにしなければならない

・トリロスタンに比べ安価

 

個人的には内科療法での第一選択としてはトリロスタンをオススメしたい。

どの薬を選ぶかは担当の獣医師とじっくり話し合ってから決めてほしい。

【さいごに】

長くなって申し訳ない。クッシング症候群は犬で多く見られるため、話すことが多くなる。クッシングはコルチゾールが過剰に分泌しすぎるために症状が出て、QOLが下がる病気である。もし、症状がない場合は無理に治療する必要がないということは知っていてもいいかもしれない。