オタ福の語り部屋

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猫の鼻腔内腫瘍(鼻腔内リンパ腫)

今回は前回の『犬の鼻腔内腫瘍』に引き続き、『猫の鼻腔内腫瘍』について話していきたいと思う。

猫の鼻腔内腫瘍のうち1/2〜1/3は鼻腔内リンパ腫とされており、残りが扁平上皮癌や腺癌である。

今回は猫の鼻腔内腫瘍で最もポピュラーなリンパ腫について話していきたい。

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【目次】

 

【概要】 リンパ腫の概要を説明

リンパ腫とは

リンパ腫とは血液中に存在するリンパ球という細胞がガン化し、無秩序に増殖している腫瘍で、造血器系腫瘍と言われている。

鼻腔内リンパ腫の特徴

また、リンパ球はT細胞性のものとB細胞性のもので2種類あり、鼻腔内リンパ腫では、3/4がB細胞由来であると言われている。

猫の鼻腔内腫瘍は犬に比べて発生頻度は少ない。かつて、猫のリンパ腫と言うとFeLV(猫白血病ウイルス)による感染で多く見られたが、ワクチンが普及した今となってはFeLV陽性によるリンパ腫は激減している。

犬の鼻腔内腫瘍と同様に転移率は低く、どちらかと言うと局所浸潤が強い印象を受ける。

 

【原因】 なりやすい原因とは?

 喫煙による暴露や慢性的な炎症が影響していると言われているが、まだまだ議論の余地がある。

 

【症状】 鼻の症状、その他の症状

鼻病変による症状 

局所浸潤が強いことから、やはり鼻腔内に限局的な病変を起こす。

・片方の鼻から鼻水が多く出る

・顔が若干腫れてきて、顔つきが変わって来た

・呼吸がしづらそう

・最近、鼻血がよく出る

など、このような症状が見られた場合はすぐに病院へ連れていくべきである。

 

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その他の症状

鼻周り以外の症状としては

・局所リンパ節が腫れてくる

・貧血になる

・水をよく飲み、おしっこをたくさんする

などが挙げられる。ただし、これらの症状は鼻腔内リンパ腫に限らず、そのほかの病気でもよく見られる症状なので、鑑別が重要になってくるだろう。

 

【診断】 これはほぼ犬の鼻腔内腫瘍と同じ

具体的な診断方法は前回掲載した、『犬の鼻腔内腫瘍』にて書いている。

こちらを参考にされたい→【診断】どうやって腫瘍の存在を確認するのか

その他、リンパ腫ならではの診断方法について書いていきたい。

CTスキャンはやっておきたい

猫の鼻腔内リンパ腫で大切なのは『鼻腔に限局している』と証明することである。つまり徹底したステージングが重要になる。

なぜそれが重要であるかというと、猫の鼻腔内リンパ腫は放射線治療で非常によく効くため、鼻腔の限局を証明できれば根治も手の届く範囲にくるからである。

限局を証明するため、かつ放射線治療を行うためにCTによる撮影が必要不可欠である。

 

リンパ腫の診断を助ける特殊検査

①PARR解析

PARR解析とはモノクローナル増殖をPCR解析によって検出するものである。

腫瘍は1つの遺伝子構成を持ったものが無秩序に増殖している。

一方で、炎症によってリンパ球が浸潤して来ている場合は様々な遺伝子構成を持ったリンパ球が浸潤しているのでPCR解析を行うと、ポリクローナルに増殖したバンドを見せる。

 こうすることで、腫瘍性病変であることを確認することができる。

 

②フローサイトメトリー

細胞表面にある表面抗原に特定のマーカーを付けた抗体がくっつくようにする。

その抗体がくっついた細胞だけを認識し、表面抗原を解析する検査方法である。

いうならば、探したい細胞にだけくっつく磁石を用意し、くっついた時に光るようにランプがついていると思ってもらえればわかりやすいと思う。

この検査法でもモノクローナルな増殖を証明することができる。

 

③免疫組織化学検査

これもPARR解析やフローサイトメトリーと同様にモノクローナル増殖を証明するための検査法で、異なる点としては病理組織検査の1つで

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あるという点である。

病理組織検査については詳しくは説明しないが、簡単にいうと腫瘍を薄く切り、腫瘍の細胞を顕微鏡で直に観るというものである。

 

【治療法】 放射線治療を中心に解説

ここではリンパ腫の治療法というよりかは”鼻腔内リンパ腫”に限定した話をしていきたいと思う 。

リンパ腫の治療は全身にかけての治療をすることが多いため、どうしても抗がん剤が必須になってくる。しかし、鼻腔内リンパ腫の場合は転移が少なく、局所浸潤が強いため、放射線治療が適応となる。

鼻腔内リンパ腫の場合、抗がん剤よりも放射線治療の方が効果があるという文献もあるため、やはり積極的に行っていくべきである。

 

放射線治療が適応となるための条件

今までの話と重複する点がいくつかあると思うが、放射線治療が使える症例の条件を述べていきたいと思う。

①外科的な切除が困難な場所である

猫の鼻腔内はとても狭く、外科的な切除を行うのは難しい。また、完全に切除しようとして場合、かなりの外貌の変化が予想されるため、手術以外の治療を検討すべきである。

②局所的な腫瘍で、転移や播種がないものである

放射線治療は非常に限局的な治療法で、全身に転移があるものに関しては意義が無くなる。ただし、QOLの向上目的とした治療では転移をしていても行われることがある。治療目的を明確にすることは大切である。

放射線によく効く種類の腫瘍である

放射線に対して抵抗性をもつ腫瘍は少なくない。そのようなタイプの腫瘍に放射線治療をしても、治療意義は薄い。幸い、リンパ腫は放射線によく効く腫瘍なため、積極的に行うべきである。

④正常な組織も障害を受けるが、それが許容範囲である

放射線治療はもちろん正常な臓器にも害を与えるので、それに耐えうる状態であるかを十分に検討するべきである。

全身麻酔に耐えれる健康状態である

 放射線治療全身麻酔が必須なため、全身麻酔がかけれるほどの身体状況である必要がある。

 

放射線治療の副作用

猫の場合、鼻腔が小さいためどうしても眼への照射は避けられない。

そのため、白内障になる可能性がある。

そのほかに脳へ照射されると脳炎が起き、『発作』が見られることもある。

皮膚の副作用は『脱毛』『皮膚の色素沈着』が挙げられる。

 

【さいごに】

猫の鼻腔内腫瘍について説明してみた。

リンパ腫は通常血液系の病気であるため、放射線治療や外科手術などの局所攻撃を行う治療はしない。

放射線治療が行える早期発見ができるように、願う。また、飼い主さんが放射線治療を選ばなかったとしても、延命を目指す抗がん剤治療ももちろん選択肢の1つである。どちらを選択するにしても、猫のためを思う行為なら、僕はどちらも正解だと思う。