オタ福の語り部屋

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急性膵炎ってどんな病気?

今回は『急性膵炎』を説明していきたいと思う。

急性膵炎というと人ではビールを飲みすぎた中年男性がなるイメージだろう。犬や猫は晩酌しているわけでもないのになぜなるのだろうか?

急性膵炎になる原因、症状、治療法などを詳しくお話ししていこうと思う。

 

【目次】

 

【概要】急性膵炎ってどんな病気?

膵臓の主な役割として2つある。1つはインスリンを分泌し、血糖値を下げる役割である。そして、もう1つは消化酵素を作り、十二指腸へ分泌して、消化を助ける役割である。

急性膵炎で問題になるのは2つめの消化酵素である。

消化酵素は本来、十二指腸に出てきて初めて消化の役割を果たすべきなのだ。

しかし、急性膵炎の場合は膵臓内で消化を開始してしまい、

自分で作った酵素によって自分を消化してしまう病気

である。

 

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【危険因子】発症しやすい犬種、年齢、性別、食生活、関連疾患とは?

急性膵炎には発症しやすいリスク因子というものがある。これらについて上記の項目を1つずつ紹介していこう。

犬種

・トイプードル

ミニチュア・シュナウザー

・キャバリア

・コッカー・スパニエル

・コリー種

などである。

年齢

中年齢〜高齢が多い。これは人と同じなので、イメージしやすい。

性別

あまりないとは言われているが、

・オスよりもメスの方がなりやすい

・去勢・不妊手術をしている方がなりやすい

という報告もある。

食生活

・食べ過ぎ

・肥満

・高脂肪食

・人の食べ物を与えている

などがある。これらも人の急性膵炎をイメージしてもらえたら分かりやすいのではないかと思う。

関連疾患

膵炎になりやすいリスクをあげる関連疾患を挙げていきたい。

・副腎皮質機能亢進症および低下症

甲状腺機能低下症

・糖尿病

これは全て内分泌疾患であり、膵臓は内分泌機能も担っていることから、何か関連があるのではないかと考える。

 

以上、膵炎になりやすい危険因子を5つの項目から挙げてみた。

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【発生機序】なぜ膵炎が起こるのか?

通常、膵臓は自ら消化してしまうこと防ぐために特別な機構を用意している。

しかし、その機構が何らかの原因で破綻することで、膵炎を発症する。

 膵臓の外分泌機構について

膵臓はトリプシンやチモーゲンを合成し、分泌している。正常の膵臓ではこれらは膵臓内では不活性化されており、十二指腸の腸上皮刷子縁にあるエンテロペプチダーゼと呼ばれるものに触れることで活性化されるようになっている。

また、膵臓内においてもチモーゲンは腺房内にチモーゲン顆粒として隔離されており、トリプシンに関してはトリプシンインヒビターと呼ばれるトリプシンの活性化を抑える酵素が存在している。

これらの機構のおかげで、膵臓では機能しない消化酵素が、十二指腸ではうまく機能するようになっているのだ。

だが、なぜ機構が破綻するのかという肝心なところは未だに解明されていない。

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【症状】急性膵炎の時に見せる症状とは

消化器の病気なので、一番顕著に症状が出るのはやはり『腹痛』である。

人の膵炎でもかなりの腹痛があると言われているが、動物でも同様のようだ。

腹痛以外には『嘔吐』『活動性の低下』『下痢』がある。

上記の症状は犬で見られるもので、猫では『食欲の低下』『活動性の低下』のみが認められる。

急性膵炎がかなり、重度であった場合は『ショック』や『DIC』といった死に直結しうるまで状況が悪化するため注意が必要だ。膵炎を発症している犬の11%が血液凝固異常を示すという報告もある。

腹痛が出ている時、犬はどのような行動をとるのだろうか?

よく言われるのが『祈りのポーズ』である。

イスラム教徒がメッカに向かってお祈りをする姿勢に近いと個人的には思っている。

猫はこのポーズはしない。猫が腹痛を訴えている時は『じっと丸まって動かない』

 

【診断】膵炎と決定するには?

①危険因子から発症の可能性を予測する

前述した【危険因子】から膵炎になりやすい犬であることを認識しておくことが早期発見に繋がる。

要注意なのが、

『中年以降の肥満の雌犬』である 。

危険因子の掛け合わせと言わんばかりの対象である。当てはまる場合は要注意だ。

 

 ②症状から予測する

これも前述の【症状】を参考にされたい。

犬ならば、『祈りのポーズ、嘔吐、下痢、元気がない』ならマークが必要

猫なら『じっとうずくまる、食欲の低下』でマークだ。

①、②はお家でも発見できる症状だ。よく注意して見ていてほしい。

 

③血液検査で精査する

①、②の症状を訴えきた場合、膵炎を強く疑うが、念のために血液検査で精査を行う必要がある。検査項目別に説明していこうと思う。

CBC(一般血液検査)

好中球増加を認める(62%)

脱水によってヘマトクリット値や総蛋白の上昇を認める

血小板減少症を認める(59%)

炎症マーカー:CRP(犬)、SAA(猫)

この2つは体の中で炎症が起きていることを示すマーカーで、どこで炎症が起こっているかまでは特定できないが、炎症を見つける能力は高い。

犬の場合、CRP(C反応性蛋白)

猫の場合、SAA(血清アミロイドA)が膵炎の時にはほぼ必ず上昇している。

膵特異的リパーゼ

膵特異的リパーゼ(PLI)

現在、膵炎の血液検査で一番有用性があると言われているものである。 しかし、これは猫ではいまいち決定力に欠けるため、犬でのみ信用されている。

 

④念には念を。超音波検査

超音波検査は比較的侵襲度は低く、行いやすいためやることがある。エコーで膵臓を映し出し、炎症が起きているかを評価する。

 

【治療法】ど定番の5本柱

①輸液

主に2つの役割がある。

1つ目に膵炎によって消化管がうまく機能できておらず、水分を吸収できていないため、それを補うことである。

2つ目は膵臓自体の循環を改善するためである。

②嘔吐を防ぐ

嘔吐は酸性の胃酸が体外へたくさん出てしまい、血液のpHを大きく変えるしまうため早めに防ぎたい。そのために『制吐剤の投与』を行う。

僕は薬理学が好きなので、ちょっと追加で書くが投与する薬は

・5HT3受容体拮抗薬のオンダンセトロン

・ニューロキニン(NK1)受容体拮抗薬のマロピタント(セレニア®️)

が有効である。

③栄養補給は一番大事

一昔前は膵炎の治療法に『絶食・絶水』というやり方があった。

しかし、今では『絶食・絶水』は免疫力の低下や栄養不足による治療の遅れが懸念され、あまり積極的には行われていない。むしろ、なるべく消化管を使って栄養補給を行うようにしている。

もちろん、大前提として食事を与えるのは『状態が安定している』ことが条件ではあるが。

無理やり食事を与えて吐いてしまうようでは、むしろ有害であるためだ。

④痛みを取り除いてあげる

膵炎はかなりの腹痛を伴うとされている。

鎮痛薬を用いて早急に痛みを取り除いてあげよう。

非麻薬系鎮痛薬ではブトルファノールブプレノルフィンがあり、

麻薬系鎮痛薬ではモルヒネフェンタニルなどが勧められている。状態に合わせて選択する。

⑤抗炎症治療

ここではステロイド薬であるプレドニゾロンが勧められる。

よく治療で使われるNSAIDsと呼ばれる非ステロイド系消炎剤は腸管の粘膜を傷つける副作用があるため、この場合は使われないのだ。

重篤な膵炎の場合、ショックや炎症を抑えるためにもステロイド剤を使うべきである。

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【急性膵炎の療法食とは】

急性膵炎では低脂肪食が薦められている

ここで、2つほどおすすめの低脂肪食を紹介しよう!

1つ目はロイヤルカナンの消化器サポート(低脂肪)だ。

もう1つはヒルズ・コルゲートの消化器ケア(low fat)

 どちらも低脂肪食で消化に優しいように作られている。

膵炎を発症し、衰弱した消化管にはうってつけのフードだろう。 

 

【さいごに】

急性膵炎について説明した。

膵炎は強烈な腹痛を与えるため、早めに見つけてあげてほしい。そして、ペットを愛するゆえに食生活へも配慮してあげてほしい。

早急な対応が苦痛から解放させられるのだ。