オタ福の語り部屋

オタクじゃない、俺はオタ福だ!

『もう怖くない!犬猫の『抗がん剤治療』とは?』

【はじめに】

今回は抗がん剤治療について話していこうと思う。

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抗がん剤治療』と聞くとどうしても「なんとなくだけど怖い」って印象があると思う。

なぜ”怖い”という印象を受けるのだろう?それは”知らない”からだ。

人は先祖代々、自分たちの知らないものに恐怖を抱いてきた

さて、抗がん剤はどうだろう?地震や幽霊、UFOなどと違い、人間が作り出した化学物質である。

ちゃんと知れば、目の前で苦しむわんちゃんに正しい治療戦略を提供できるはずだ。今回はそんな心優しい愛犬家のために抗がん剤について話していこうと思う。

 

【目次】

【抗がん剤とは?】 

 -まとめ①

【なぜ抗がん剤治療じゃなきゃダメなの?】

 -まとめ② 

【その瞬間が勝負!経過観察がダメな理由】

 -まとめ③ 

【何種類も抗がん剤を使う本当の理由】

 -まとめ④

【さいごに】

 

抗がん剤とは?】 

抗がん剤ってどうやってできたの?

”人を治すため”抗がん剤が誕生した歴史は皮肉にも”人を殺すため”に作られたものだった。人類が初めて使った抗がん剤『ナイトロジェンマスタードというものである。これはマスタードガス』という第一次世界大戦後に作られた化学兵器を元に作られている。ナイトロジェンマスタードマスタードガスの硫黄原子を窒素に置き換えたもので、その細胞毒性を癌細胞に応用して使用した。

 

抗がん剤の原理(作用機序)

抗がん剤細胞毒性を持つ。抗がん剤の持つ細胞毒性とは細胞内にある核を攻撃し、細胞の殺したり、分裂を妨害する作用がある。活発に分裂している細胞ほど、この細胞毒性の作用は受けやすい。なぜなら、ちょっと詳しく説明すると細胞分裂時の細胞はDNAの複製が活発に行われている。この状態の細胞に抗がん剤を曝露すると、複製を邪魔するので、細胞が死んでしまう。このようにした抗がん剤は効力を示している。

 

まとめ①

抗がん剤は元々化学兵器に使われていた

抗がん剤細胞毒性によって癌細胞を倒す

 

【なぜ抗がん剤治療じゃなきゃダメなの?】

抗がん剤は全身に効く! 

抗がん剤治療はほとんどの場合、血流に乗って全身へと運ばれる。いわば、全身に抗がん剤を行き渡らせることができる。これは大きなメリットである。というのも、外科的切除の場合、非常に局所的な攻撃でしかない。もし、癌が転移していたなら手術だけじゃどうしようもない。あるいはリンパ腫と呼ばれる『血液の癌』の場合、全身に血液は流れているので、局所的な手術じゃ意味がない。だから、抗がん剤治療が必要なのだ。

 

手術を助ける、アジュバンド療法?、ネオアジュバンド療法?

アジュバンド療法とは手術を行い、外科的に切除した後、抗がん剤で追い打ちする方法である。ある程度ごっそり切除してから、取り残した癌細胞を抗がん剤で倒そう!といったコンセプトである。それに対し、ネオアジュバンド療法とは抗がん剤を使用し、抗がん剤ではもう倒しきれないっという状態まで持っていき、残った小さくなった癌を手術で取り除くといった方法である。最近の研究ではネオアジュバンド療法の方が予後が良いという論文も出ている。

 

麻酔がいらない

麻酔はあえて死に近づける処置であるとよく言われる。一時的に意識を奪い、痛みから解放させて手術を行う。だが、癌患者はもうすでに麻酔に耐えられるほどの体力が残っていない場合がある。こんな時、麻酔をかけずにできる癌治療が抗がん剤なのだ。

 

まとめ②

抗がん剤全身治療として用いられる

アジュバンド療法:手術→抗がん剤治療

ネオアジュバンド療法抗がん剤治療→手術

抗がん剤治療は麻酔をかけずにできる治療 

 

【その瞬間が勝負!経過観察ではダメな理由】

 
早期治療じゃないと抗がん剤が効かなくなる 

次に図を見て欲しい

f:id:otahukutan:20180905205203p:plainGompertzianの成長動態

これはゴンペルツ成長曲線という有名なグラフで横軸が時間経過縦軸が腫瘍の細胞数を示している。

ここで言いたいのは「細胞数が少ない、つまり腫瘍が小さい時ほど細胞分裂は活発で、腫瘍が大きなると分裂は低下する」ということだ。

先ほど述べたように、抗がん剤細胞分裂が盛んな癌ほどよく効くので 、腫瘍が小さい早いうちから抗がん剤治療を始める必要があるのだ。

 

腫瘍の大きさと予後は関連している

腫瘍が大きくなればなるほど、手術は困難になり、転移のリスクも上がる。また、気管を圧迫し息苦しくなったりと動物のQOLを下げてしまう。そのため、早期の抗がん剤治療は必要なのだ。

 

まとめ③

抗がん剤は腫瘍が小さい時ほど、早く効く

・腫瘍は大きくなるほど、QOLが下がり治療が難しくなってしまう 

 

【何種類も抗がん剤を使う本当の理由】

 

薬物耐性の抗がん剤を早めに倒す

何種類もの抗がん剤を使用する治療法を多剤併用化学療法と言う。

1つの抗がん剤だけを使用していくと、遺伝子変異によりその抗がん剤には効かない癌細胞が作られてくる。異なる種類の抗がん剤で治療していくことで、薬物耐性癌細胞の発生率を減らすことができる。この考えは『goldie-coldman仮説』という有名な理論がとして知られています。

 

多剤併用療法がより強い薬剤強度を持つわけではない

例を用いて説明する。

ドキソルビシンという抗がん剤とシスプラチンという抗がん剤がある。

単剤で使用した場合

ドキソルビシンは1週間で15の量打つと効果が出る。

シスプラチンは1週間で23.3の量打つと効果が出る。

この2つを併用した場合

(ドキソルビシンは1週間で5)+(シスプラチンは1週間で16.7)の量打つと効果が出る。

ドキソルビシンは単剤使用に比べ、5/15で0.33倍の量になり

シスプラチンは16.7/23.3で0.72倍の量になるが

この2つを足したものは0.33+0.72=1.05で結局、単剤使用とあまり変わらない。

 

まとめ④

・多剤併用療法で薬物耐性癌細胞を減らす

・単剤療法と併用療法で薬物強度は変わらない

・強度が変わらないなら、多剤併用療法の方がお得!

 

【さいごに】

抗がん剤治療をしなければならない理由を中心にお話しした 。飼い主が疑問に思う点、心配になる点をピックアップして話したつもりだ。本当は抗がん剤の副作用についても書こうと思ったのだが、正しい知識とエビデンスを提供するためにはかなりの量になっちゃうので、また別の回にお話ししたいとと思う。

抗がん剤は人間が作った化学物質なので、正しく理解し、利用できるはずだと僕は信じている。なので、皆さんもわんちゃんに向き合って、正しい知識を持ってともに癌と戦ってあげて欲しい。