オタ福の語り部屋

オタクじゃない、俺はオタ福だ!

犬で多い、『クッシング症候群』とは?

今回は『クッシング症候群』について説明する。

クッシング症候群とは別名、副腎皮質機能亢進症とも呼ばれる。名前の通り、副腎皮質の機能が更新し、それによって引き起こされる様々な病変をまとめた病気である。

人では比較的少なく、耳にすることは少ないが犬の場合かなり多いと思う。

クッシング症候群は見た目も特徴的で、わかりやすい。

クッシング症候群は内分泌系の疾患であり、症状を元に検査や診断方法、治療法をメインに話していこうと思う。

 

【目次】

 

【病態】クッシングはどんな病気なのか

クッシング症候群とは簡単に言うと体内で糖質コルチコイドが過剰になり、それによって様々な病変が起こる内分泌疾患である。

糖質コルチコイドとは

副腎皮質の束状帯から合成・分泌されるステロイドの一種である。

下垂体前葉から分泌された副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が副腎皮質の作用して、合成を促す。

糖質コルチコイドの作用

クッシング症候群を語る上で、糖質コルチコイドの作用の説明は避けられない。これを知っておけばほとんど、クッシングを理解したと言っても過言ではない。

とても基礎的な話になるが、どうぞお付き合い願いたい。

①糖上昇作用

・筋肉や脂肪を分解して、肝臓にグルコース産生を促す。

血糖値を上げる。

②抗炎症作用

・炎症カスケードのホスホリパーゼA2抑制作用により、炎症物質のロイコトリエンやプロスタグランジンの生成をブロックする。

・リソソーム膜を安定化させ、プロテアーゼという細胞を壊す物質を抑制する

・肥満細胞からのヒスタミン放出を抑制する。ヒスタミンはアレルギーやアトピーで症状を悪化させる原因物質である。

③許容作用

①の糖上昇作用をより促進させる作用をもつ。

④神経作用

・中枢神経の糖質コルチコイド受容体があり、糖質コルチコイドが欠乏すると神経過敏になる。

⑤抗ストレス作用

・ストレスを感じると下垂体からACTHが分泌され、糖質コルチコイドを作る。④の許容作用を活性化させる。

⑥骨密度減少作用

実は骨は常に破壊され、造られを繰り返している。これらは破骨細胞と骨芽細胞のバランスによって緻密に制御されいるのだが、糖質コルチコイドは破骨細胞の力を強め、重症例では骨粗鬆症になりうる。また、腸管からのカルシウム吸収も活性化させる。

 

糖質コルチコイドが増加する原因

では、何が原因で体内に糖質コルチコイドが増加するのだろう?

原因は大きく分けて3つある。

①下垂体性クッシング症候群(PDH)

下垂体が腫瘍化し、ACTHを過剰に分泌し、副腎に糖質コルチコイドを作るよう働きかけることで起こるクッシング症候群である。この下垂体性クッシング症候群が、ほとんどであり、約80~90%という報告がある。

下垂体腫瘍自体は良性のことがほとんどなのだが、ACTHを大量に分泌すると言った点ではかなり有害な腫瘍である。こういったホルモンを大量に分泌する腫瘍を機能性腫瘍という。

 

②副腎腫瘍性クッシング症候群(AT)

副腎皮質が腫瘍化し、ACTHの影響に関係なく糖質コルチコイドを過剰に産生するクッシング症候群である。これが原因となるクッシング症候群は約10~15%と報告されている。副腎腫瘍は悪性と良性で半々である。

 

③医原性クッシング症候群

ステロイド薬の過剰な処方により、体内の糖質コルチコイド量が上昇して起こる。これは炎症を抑えるために、ステロイド薬を乱用した結果起こるものなので、まめなモニタリングが非常に重要になってくる。

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【症状】クッシングは外見が特徴的だ!!

クッシング症候群の症状は副腎皮質から過剰に分泌されるコルチゾール(副腎皮質から産生される糖質コルチコイドのこと)によるものがほとんどである。 出やすい症状順に紹介していく。ほとんどがコルチゾールによる影響で出てくる症状なので、上記の『糖質コルチコイドの作用』をおさらいしておくと分かりやすいかもしれない。

多飲多尿(80~91%)

多飲多尿とは読んで字のごとく、『よく水を飲み、よくおしっこをする』という症状だ。クッシング症候群の場合、最もよく見られる症状である。

コルチゾールには抗利尿ホルモンと言われる尿を出す前に水分を体へ再吸収するよう促すホルモンを抑制してしまう作用がある。

これにより、水分の再吸収能が低下してしまい喉が渇く。この循環でおしっこしては水を飲むようになる。

 

脱毛(60~74%)

毛が抜ける。そのままだ。しかし、特徴としては『内分泌性脱毛』といって左右対称に抜けていくことを覚えておこう!

これはコルチゾールの影響で、毛根の休止期が延長するためである。

毛根というのは主に4つのサイクルで循環していることを知っていてほしい。

毛根は

成長期→退行期→休止期→成長初期の順で回っている。

・成長期:毛が伸びる勢いがもっとも盛ん

・退行期:伸びる勢いが低下する

・休止期:毛の成長は止まり、抜ける

・成長初期:休止期のあと、新たな毛を生やす準備をする

 ここの休止期が延長することで、新しく毛が生えにくくなり、抜け毛が目立つのだ。

 

腹部膨満(67~73%)

簡単にいうとお腹がたるんでくる。脂肪がついて太ってきたというよりは『たるんだ』という印象を受けるだろう。この理由もコルチゾールのせいである。

原因として、

1つは先ほどの多飲多尿の項で説明したように尿が膀胱に溜まってくることがある。

2つ目は筋肉が分解されるので、腹筋が弱くなり 、お腹がたるむからだ。

3つ目は腹部のもっとも大きい臓器である肝臓が腫れてくるからだ。

以上のことから、お腹がたるんで見えるのだ。

 

呼吸促迫、パンディング(30%)

クッシング症候群を患っている動物は『呼吸が荒く』なる。

その理由としては

筋肉の分解作用によって呼吸筋が弱くなっている

肺や気管が石灰化し、膨らみにくくなっている

・肝臓などの腹部の臓器が腫れており、胸腔を広げる邪魔をしている

以上の3点から呼吸がしにくくなるのだ。

 

その他

まだまだあげられる症状はあるが下のように簡単にまとめた。

皮膚の石灰沈着:骨を分解し、カルシウムが皮膚に蓄積する

筋力低下コルチゾールは筋肉分解する作用がある

多食コルチゾールによって、食欲が増加する

神経症状(PDHのみ):下垂体腫瘍が大きくなって脳を圧迫すると起こる

 

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【診断】クッシングの診断はフローチャートだ!

クッシングの診断方法はフローチャート式になっており、

まずクッシングかどうかの診断を行う

次に下垂体性か副腎腫瘍かの判別を行っていくというものだ。

では早速説明していこう!

①症状から疑え !

先ほど説明した【症状】に該当する場合はクッシング症候群を疑うべきである。

多飲多尿、腹部膨満、内分泌性脱毛などクッシングで高確率で見られる症状から当たりをつけていく。

 

②ACTH刺激試験で確証を得ろ!

クッシング症候群であるかどうかを診断するためにはACTH刺激試験を行う。

【方法】

ACTH刺激試験とは合成ACTHを0.25mg/頭で筋肉内投与し、1時間後に血中のコルチゾール値がどうなっているかを見る試験である。

 

【検査の仕組み】

この試験で何がわかるかというと、

通常体内のホルモンというのはバランスが取られている。つまり、増えすぎたり減りすぎたりすると正常値に戻すように体が働きかけるのだ。しかし、クッシング症候群などの内分泌疾患ではその調節機構が破綻している。

そのため、コルチゾールの分泌を促すACTHを投与すると通常の場合は調節機構によってコルチゾール値が低下する。一方で、クッシング症候群の場合は投与したACTHに関係なくコルチゾールを分泌し続ける。

 

【結果どうなるのか】

よって、結果として1時間後の血中コルチゾール値は高値のままになる。

 ただし、これで上昇するのは下垂体性の場合で85%、副腎腫瘍の場合で60%である。

また、低値になった場合は90%の確率でクッシングでないことが証明される。

 

では、上昇を示さなかった残りの下垂体性(15%)あるいは副腎腫瘍(40%)はどのように発見するのだろうか?

次のは低用量デキサメタゾン抑制試験(LDDST)である。

 

③殲滅作戦、LDDSTで逃げ道を塞げ!

この試験はクッシング症候群において必須の試験ではない。

『明らかにクッシングを疑う症状。でも、ACTH試験が陰性。』

そんな時に行う試験である。なぜなら、この試験は陽性を示す症例の95%の確率でクッシングを見つけられるからだ。

ではなぜ、最初からこれをやらないのか?

それは『めっちゃめんどくさいから』この一言に尽きる。

この試験中は

・決して興奮させてはならない

・ご飯もあげることはできない

・投与前、投与4時間後、8時間後に測定を行わなければならない

非常にめんどくさい(笑)

 

【検査の仕組み】

原理としてはごく少量のデキサメタゾン(0.01mg/kg)を静脈内投与し、先ほど同様に調節機構が働くかを見る試験である。

 

【結果】

クッシング症候群であった場合は調節機構が働かず、コルチゾールは高値を示したままになる。

 

④エコーで下垂体性か副腎腫瘍か見極めろ!

①〜③でクッシング症候群であるとわかれば、次は下垂体性クッシング症候群(PDH)副腎腫瘍(AT)かを鑑別する必要がある。

エコーで何を見るのかというと、副腎だ。病態の項目で使用した図をもう一度見て欲しい。

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PDHは正常な副腎に比べ、両方が大きくなっている。(約6~8mm)

一方で、

ATでは片方の副腎のみが大きくなっている。(約2cm)

この違いを超音波検査で描出できれば勝ちである。

 

⑤その他の検査

尿コルチゾールクレアチニン

クッシングではないこと証明する時に使う試験

高用量デキサメタゾン抑制試験(HDDST)

エコーでPDHとATの判断つかなかった時に行う試験

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【治療法】クッシングは治せるの?

散々ここまで話してきたクッシング症候群、どんな治療法があるのだろうか。

まず、治療はPDHとATで大きく分かれる。そして、2つが共通する内科治療についての三本立てで話を進めていこうと思う。

下垂体性クッシング症候群(PDH)

PDHの場合、根治治療となるのは『経蝶形骨下垂体切除術』である。

しかし、これは特殊な器具と熟練した手術チームが必要なため現実的ではない。

PDHは内科療法で症状をコントロールしていくのが、セオリーに感じる。

内科療法に関しては後述する。

 

副腎腫瘍(AT)

こちらはPDHと異なり、腫瘍化した方の副腎を外科的切除することが第一選択となる。切除後はもう片方の萎縮していた副腎が復活するまで、コルチゾールを打たなければならないが、それ以外は転移がなければ大丈夫だろう。

もし、転移や飼い主の意向により手術適応外であればPDHの内科療法の準ずる。

 

内科療法

トリロスタン(アドレスタン®️)

仕組み

トリロスタンは副腎皮質ステロイドホルモンを作るのに必要な酵素である3β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素を妨害することで、コルチゾールの産生を抑える。

 

特徴

・副作用が少なく、治療成績もいい

・他の薬と比べて高価な印象

トリロスタンは一生飲み続ける必要がある薬なので、副作用、値段ともに十分吟味したいところではある。

 

ミトタン(オペプリム®️)

仕組み

副腎皮質の束状帯と網状帯のホルモン産生細胞を攻撃することで、コルチゾールの分泌を抑える薬。

 

特徴

・副作用は大きく、再生不可能のように産生細胞を攻撃するので、壊しすぎないようにしなければならない

・トリロスタンに比べ安価

 

個人的には内科療法での第一選択としてはトリロスタンをオススメしたい。

どの薬を選ぶかは担当の獣医師とじっくり話し合ってから決めてほしい。

 

【さいごに】

長くなって申し訳ない。クッシング症候群は犬で多く見られるため、話すことが多くなる。クッシングはコルチゾールが過剰に分泌しすぎるために症状が出て、QOLが下がる病気である。もし、症状がない場合は無理に治療する必要がないということは知っていてもいいかもしれない。

猫の鼻腔内腫瘍(鼻腔内リンパ腫)

今回は前回の『犬の鼻腔内腫瘍』に引き続き、『猫の鼻腔内腫瘍』について話していきたいと思う。

猫の鼻腔内腫瘍のうち1/2〜1/3は鼻腔内リンパ腫とされており、残りが扁平上皮癌や腺癌である。

今回は猫の鼻腔内腫瘍で最もポピュラーなリンパ腫について話していきたい。

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【目次】

 

【概要】 リンパ腫の概要を説明

リンパ腫とは

リンパ腫とは血液中に存在するリンパ球という細胞がガン化し、無秩序に増殖している腫瘍で、造血器系腫瘍と言われている。

鼻腔内リンパ腫の特徴

また、リンパ球はT細胞性のものとB細胞性のもので2種類あり、鼻腔内リンパ腫では、3/4がB細胞由来であると言われている。

猫の鼻腔内腫瘍は犬に比べて発生頻度は少ない。かつて、猫のリンパ腫と言うとFeLV(猫白血病ウイルス)による感染で多く見られたが、ワクチンが普及した今となってはFeLV陽性によるリンパ腫は激減している。

犬の鼻腔内腫瘍と同様に転移率は低く、どちらかと言うと局所浸潤が強い印象を受ける。

 

【原因】 なりやすい原因とは?

 喫煙による暴露や慢性的な炎症が影響していると言われているが、まだまだ議論の余地がある。

 

【症状】 鼻の症状、その他の症状

鼻病変による症状 

局所浸潤が強いことから、やはり鼻腔内に限局的な病変を起こす。

・片方の鼻から鼻水が多く出る

・顔が若干腫れてきて、顔つきが変わって来た

・呼吸がしづらそう

・最近、鼻血がよく出る

など、このような症状が見られた場合はすぐに病院へ連れていくべきである。

 

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その他の症状

鼻周り以外の症状としては

・局所リンパ節が腫れてくる

・貧血になる

・水をよく飲み、おしっこをたくさんする

などが挙げられる。ただし、これらの症状は鼻腔内リンパ腫に限らず、そのほかの病気でもよく見られる症状なので、鑑別が重要になってくるだろう。

 

【診断】 これはほぼ犬の鼻腔内腫瘍と同じ

具体的な診断方法は前回掲載した、『犬の鼻腔内腫瘍』にて書いている。

こちらを参考にされたい→【診断】どうやって腫瘍の存在を確認するのか

その他、リンパ腫ならではの診断方法について書いていきたい。

CTスキャンはやっておきたい

猫の鼻腔内リンパ腫で大切なのは『鼻腔に限局している』と証明することである。つまり徹底したステージングが重要になる。

なぜそれが重要であるかというと、猫の鼻腔内リンパ腫は放射線治療で非常によく効くため、鼻腔の限局を証明できれば根治も手の届く範囲にくるからである。

限局を証明するため、かつ放射線治療を行うためにCTによる撮影が必要不可欠である。

 

リンパ腫の診断を助ける特殊検査

①PARR解析

PARR解析とはモノクローナル増殖をPCR解析によって検出するものである。

腫瘍は1つの遺伝子構成を持ったものが無秩序に増殖している。

一方で、炎症によってリンパ球が浸潤して来ている場合は様々な遺伝子構成を持ったリンパ球が浸潤しているのでPCR解析を行うと、ポリクローナルに増殖したバンドを見せる。

 こうすることで、腫瘍性病変であることを確認することができる。

 

②フローサイトメトリー

細胞表面にある表面抗原に特定のマーカーを付けた抗体がくっつくようにする。

その抗体がくっついた細胞だけを認識し、表面抗原を解析する検査方法である。

いうならば、探したい細胞にだけくっつく磁石を用意し、くっついた時に光るようにランプがついていると思ってもらえればわかりやすいと思う。

この検査法でもモノクローナルな増殖を証明することができる。

 

③免疫組織化学検査

これもPARR解析やフローサイトメトリーと同様にモノクローナル増殖を証明するための検査法で、異なる点としては病理組織検査の1つで

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あるという点である。

病理組織検査については詳しくは説明しないが、簡単にいうと腫瘍を薄く切り、腫瘍の細胞を顕微鏡で直に観るというものである。

 

【治療法】 放射線治療を中心に解説

ここではリンパ腫の治療法というよりかは”鼻腔内リンパ腫”に限定した話をしていきたいと思う 。

リンパ腫の治療は全身にかけての治療をすることが多いため、どうしても抗がん剤が必須になってくる。しかし、鼻腔内リンパ腫の場合は転移が少なく、局所浸潤が強いため、放射線治療が適応となる。

鼻腔内リンパ腫の場合、抗がん剤よりも放射線治療の方が効果があるという文献もあるため、やはり積極的に行っていくべきである。

 

放射線治療が適応となるための条件

今までの話と重複する点がいくつかあると思うが、放射線治療が使える症例の条件を述べていきたいと思う。

①外科的な切除が困難な場所である

猫の鼻腔内はとても狭く、外科的な切除を行うのは難しい。また、完全に切除しようとして場合、かなりの外貌の変化が予想されるため、手術以外の治療を検討すべきである。

②局所的な腫瘍で、転移や播種がないものである

放射線治療は非常に限局的な治療法で、全身に転移があるものに関しては意義が無くなる。ただし、QOLの向上目的とした治療では転移をしていても行われることがある。治療目的を明確にすることは大切である。

放射線によく効く種類の腫瘍である

放射線に対して抵抗性をもつ腫瘍は少なくない。そのようなタイプの腫瘍に放射線治療をしても、治療意義は薄い。幸い、リンパ腫は放射線によく効く腫瘍なため、積極的に行うべきである。

④正常な組織も障害を受けるが、それが許容範囲である

放射線治療はもちろん正常な臓器にも害を与えるので、それに耐えうる状態であるかを十分に検討するべきである。

全身麻酔に耐えれる健康状態である

 放射線治療全身麻酔が必須なため、全身麻酔がかけれるほどの身体状況である必要がある。

 

放射線治療の副作用

猫の場合、鼻腔が小さいためどうしても眼への照射は避けられない。

そのため、白内障になる可能性がある。

そのほかに脳へ照射されると脳炎が起き、『発作』が見られることもある。

皮膚の副作用は『脱毛』『皮膚の色素沈着』が挙げられる。

 

【さいごに】

猫の鼻腔内腫瘍について説明してみた。

リンパ腫は通常血液系の病気であるため、放射線治療や外科手術などの局所攻撃を行う治療はしない。

放射線治療が行える早期発見ができるように、願う。また、飼い主さんが放射線治療を選ばなかったとしても、延命を目指す抗がん剤治療ももちろん選択肢の1つである。どちらを選択するにしても、猫のためを思う行為なら、僕はどちらも正解だと思う。

 

急性膵炎ってどんな病気?

今回は『急性膵炎』を説明していきたいと思う。

急性膵炎というと人ではビールを飲みすぎた中年男性がなるイメージだろう。犬や猫は晩酌しているわけでもないのになぜなるのだろうか?

急性膵炎になる原因、症状、治療法などを詳しくお話ししていこうと思う。

 

【目次】

 

【概要】急性膵炎ってどんな病気?

膵臓の主な役割として2つある。1つはインスリンを分泌し、血糖値を下げる役割である。そして、もう1つは消化酵素を作り、十二指腸へ分泌して、消化を助ける役割である。

急性膵炎で問題になるのは2つめの消化酵素である。

消化酵素は本来、十二指腸に出てきて初めて消化の役割を果たすべきなのだ。

しかし、急性膵炎の場合は膵臓内で消化を開始してしまい、

自分で作った酵素によって自分を消化してしまう病気

である。

 

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【危険因子】発症しやすい犬種、年齢、性別、食生活、関連疾患とは?

急性膵炎には発症しやすいリスク因子というものがある。これらについて上記の項目を1つずつ紹介していこう。

犬種

・トイプードル

ミニチュア・シュナウザー

・キャバリア

・コッカー・スパニエル

・コリー種

などである。

年齢

中年齢〜高齢が多い。これは人と同じなので、イメージしやすい。

性別

あまりないとは言われているが、

・オスよりもメスの方がなりやすい

・去勢・不妊手術をしている方がなりやすい

という報告もある。

食生活

・食べ過ぎ

・肥満

・高脂肪食

・人の食べ物を与えている

などがある。これらも人の急性膵炎をイメージしてもらえたら分かりやすいのではないかと思う。

関連疾患

膵炎になりやすいリスクをあげる関連疾患を挙げていきたい。

・副腎皮質機能亢進症および低下症

甲状腺機能低下症

・糖尿病

これは全て内分泌疾患であり、膵臓は内分泌機能も担っていることから、何か関連があるのではないかと考える。

 

以上、膵炎になりやすい危険因子を5つの項目から挙げてみた。

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【発生機序】なぜ膵炎が起こるのか?

通常、膵臓は自ら消化してしまうこと防ぐために特別な機構を用意している。

しかし、その機構が何らかの原因で破綻することで、膵炎を発症する。

 膵臓の外分泌機構について

膵臓はトリプシンやチモーゲンを合成し、分泌している。正常の膵臓ではこれらは膵臓内では不活性化されており、十二指腸の腸上皮刷子縁にあるエンテロペプチダーゼと呼ばれるものに触れることで活性化されるようになっている。

また、膵臓内においてもチモーゲンは腺房内にチモーゲン顆粒として隔離されており、トリプシンに関してはトリプシンインヒビターと呼ばれるトリプシンの活性化を抑える酵素が存在している。

これらの機構のおかげで、膵臓では機能しない消化酵素が、十二指腸ではうまく機能するようになっているのだ。

だが、なぜ機構が破綻するのかという肝心なところは未だに解明されていない。

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【症状】急性膵炎の時に見せる症状とは

消化器の病気なので、一番顕著に症状が出るのはやはり『腹痛』である。

人の膵炎でもかなりの腹痛があると言われているが、動物でも同様のようだ。

腹痛以外には『嘔吐』『活動性の低下』『下痢』がある。

上記の症状は犬で見られるもので、猫では『食欲の低下』『活動性の低下』のみが認められる。

急性膵炎がかなり、重度であった場合は『ショック』や『DIC』といった死に直結しうるまで状況が悪化するため注意が必要だ。膵炎を発症している犬の11%が血液凝固異常を示すという報告もある。

腹痛が出ている時、犬はどのような行動をとるのだろうか?

よく言われるのが祈りのポーズ』である。

イスラム教徒がメッカに向かってお祈りをする姿勢に近いと個人的には思っている。

猫はこのポーズはしない。猫が腹痛を訴えている時は『じっと丸まって動かない』

 

【診断】膵炎と決定するには?

①危険因子から発症の可能性を予測する

前述した【危険因子】から膵炎になりやすい犬であることを認識しておくことが早期発見に繋がる。

要注意なのが、

『中年以降の肥満の雌犬』である 。

危険因子の掛け合わせと言わんばかりの対象である。当てはまる場合は要注意だ。

 

 ②症状から予測する

これも前述の【症状】を参考にされたい。

犬ならば、祈りのポーズ、嘔吐、下痢、元気がない』ならマークが必要

猫なら『じっとうずくまる、食欲の低下』でマークだ。

①、②はお家でも発見できる症状だ。よく注意して見ていてほしい。

 

③血液検査で精査する

①、②の症状を訴えきた場合、膵炎を強く疑うが、念のために血液検査で精査を行う必要がある。検査項目別に説明していこうと思う。

CBC(一般血液検査)

好中球増加を認める(62%)

脱水によってヘマトクリット値や総蛋白の上昇を認める

血小板減少症を認める(59%)

炎症マーカー:CRP(犬)、SAA(猫)

この2つは体の中で炎症が起きていることを示すマーカーで、どこで炎症が起こっているかまでは特定できないが、炎症を見つける能力は高い。

犬の場合、CRP(C反応性蛋白)

猫の場合、SAA(血清アミロイドA)が膵炎の時にはほぼ必ず上昇している。

膵特異的リパーゼ

膵特異的リパーゼ(PLI)

現在、膵炎の血液検査で一番有用性があると言われているものである。 しかし、これは猫ではいまいち決定力に欠けるため、犬でのみ信用されている。

 

④念には念を。超音波検査

超音波検査は比較的侵襲度は低く、行いやすいためやることがある。エコーで膵臓を映し出し、炎症が起きているかを評価する。

 

【治療法】ど定番の5本柱

①輸液

主に2つの役割がある。

1つ目に膵炎によって消化管がうまく機能できておらず、水分を吸収できていないため、それを補うことである。

2つ目は膵臓自体の循環を改善するためである。

②嘔吐を防ぐ

嘔吐は酸性の胃酸が体外へたくさん出てしまい、血液のpHを大きく変えるしまうため早めに防ぎたい。そのために『制吐剤の投与』を行う。

僕は薬理学が好きなので、ちょっと追加で書くが投与する薬は

・5HT3受容体拮抗薬のオンダンセトロン

・ニューロキニン(NK1)受容体拮抗薬のマロピタント(セレニア®️)

が有効である。

③栄養補給は一番大事

一昔前は膵炎の治療法に『絶食・絶水』というやり方があった。

しかし、今では『絶食・絶水』は免疫力の低下や栄養不足による治療の遅れが懸念され、あまり積極的には行われていない。むしろ、なるべく消化管を使って栄養補給を行うようにしている。

もちろん、大前提として食事を与えるのは『状態が安定している』ことが条件ではあるが。

無理やり食事を与えて吐いてしまうようでは、むしろ有害であるためだ。

④痛みを取り除いてあげる

膵炎はかなりの腹痛を伴うとされている。

鎮痛薬を用いて早急に痛みを取り除いてあげよう。

非麻薬系鎮痛薬ではブトルファノールブプレノルフィンがあり、

麻薬系鎮痛薬ではモルヒネフェンタニルなどが勧められている。状態に合わせて選択する。

⑤抗炎症治療

ここではステロイド薬であるプレドニゾロンが勧められる。

よく治療で使われるNSAIDsと呼ばれる非ステロイド系消炎剤は腸管の粘膜を傷つける副作用があるため、この場合は使われないのだ。

重篤な膵炎の場合、ショックや炎症を抑えるためにもステロイド剤を使うべきである。

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【さいごに】

急性膵炎について説明した。

膵炎は強烈な腹痛を与えるため、早めに見つけてあげてほしい。そして、ペットを愛するゆえに食生活へも配慮してあげてほしい。

早急な対応が苦痛から解放させられるのだ。

犬の鼻腔内腫瘍

今回は『犬の鼻腔内腫瘍』について説明する。

なぜ、タイトルを”犬”と限定したかというと、猫でできやすい鼻腔内腫瘍はリンパ腫であり、犬とは異なる腫瘍が好発であるため分けて話していきたいと思う。

鼻腔内腫瘍とは鼻の中にできる腫瘍であり、犬でできやすい腫瘍は主に4つある。

腺癌、扁平上皮癌、軟骨肉腫、線維肉腫が挙げられる。

今回は各々の腫瘍別に話をするのではなく、鼻腔内腫瘍ということで包括的な話ができればいいなと考えている。

鼻腔内腫瘍は局所浸潤性が強く、死因は転移によるものではなく、原発巣が原因となっている場合がほとんどである。

では、『犬の鼻腔内腫瘍』について話していこう!

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【目次】

 

【概要】

鼻腔内腫瘍で多いのは前述の通り、

『腺癌』『扁平上皮癌』『軟骨肉腫』『線維肉腫』である。

これらの腫瘍は鼻腔内において、局所浸潤性が強いのが特徴である。

転移も時折みられ、中でも局所リンパ節や肺への転移が多い。

 鼻腔内腫瘍の腺癌の約60%で核に癌抑制遺伝子であるp53の蓄積が認められ、それはp53腫瘍抑制蛋白の変異によるものと確認されている。

 

【原因】 鼻腔内腫瘍の主な原因って?

正直なところ、これという明確な原因は分かっていない。

しかし、原因の1つと言われているものが、喫煙や排気ガス、灯油ヒーターによって生じる化学物質である。

特に解剖学的構造からその化学物質に暴露されやすい長頭種に多いと言われている。

 

【症状】 鼻腔内腫瘍を疑う症状はこれだ!

初期症状

初期症状としては『くしゃみ』『いびき』『鼻水』などから始まる。

鼻の中にできものができてくるので、気道が狭くなり『いびき』が出るのだ。

中期症状

次に『鼻血』が出る。鼻腔内腫瘍は局所浸潤性が強いため、鼻の正常な部分を破壊しつつ増殖する。そのため、鼻血が出てくる。

高齢の動物で、片方の鼻から鼻血が見られ、膿汁性の鼻水が見られた場合は鼻腔内腫瘍を強く疑うべきである。

さらに病状が進んでくると

鼻や目の周りの骨を破壊して増殖してくるため、『外貌の変化』が見られる。

腫瘍が篩骨甲介と呼ばれる部位まで浸潤してくると嗅覚がなくなってしまい、食欲が低下してくる。

※篩骨甲介とは…頭蓋骨と鼻を分けている部位で、嗅細胞が存在し、嗅覚を担う部位

末期症状

最終的には篩骨甲介を突き破り、脳まで浸潤してくる。

こうなると、てんかん発作』『運動失調』『痙攣』などの神経症状が見られるようになってくる。

しかし、ほとんどの飼い主は鼻血が出た時点で、慌てて連れて来られるため、脳まで浸潤している状態まで放置されていることは稀である。

その他の症状

またまたしかしなのだが、ごく稀に鼻腔後部で腫瘍を作っている犬ではくしゃみや鼻血無しに神経症状が現れることがある。

 

【診断】 どうやって腫瘍の存在を確認するのか

まずは症状から当たりをつける

 前述した症状から、このような症状を見せる子たちに対しては“鼻”か“脳”に異常があるなと考えるのがセオリーである。

そして、腫瘍以外の可能性も考慮することを忘れてはいけない。

症状からまず僕たちは

鼻腔内腫瘍、真菌性鼻炎、細菌性鼻炎、その他の脳疾患を疑う。

これらの中から、1つ1つ除去して行くのだ。

 

画像診断から病変を見つける

鼻腔内腫瘍は鼻の中や頭蓋骨の中にできる腫瘍であるため、肉眼で見ることはほぼ不可能である。そこで使われるのが『レントゲン』『CT』である。

これらの検査は全身麻酔をかけて、行うため、麻酔のリスクを考慮しなければならない。

基本的に頭部のCTやレントゲン像は左右対称が原則となっており、それを崩すような陰影がみられた場合、それが病変である。

レントゲンやCTでみられる映像としては

篩骨や鼻腔周囲の骨破壊、軟部組織陰影が挙げられる。

ただし、画像診断によってみられる病変の像はそれ自体が腫瘍であること確定する所見にはならない。

腫瘍を確定するためには『鼻腔内の生検』を行わなければならない。

鼻腔内の生検は特殊でたくさん話すことがあるため、項目を分けて書こうと思う。

 

みんな大好き血液検査

鼻腔内腫瘍に関して、血液検査を行う意義はあまりない。

おそらく、炎症マーカーであるCRPの上昇や、腫瘍随伴症候群と言われている腫瘍随伴性赤血球増加症、高カルシウム血症などが診断される程度である。

 

中枢神経疾患でお決まりの脳脊髄液

中枢神経疾患ではやっておきたい検査に脳脊髄液の検査がある。

これによって、腫瘍性病変なのか炎症性病変なのかが、鑑別しやすくなる。 

 

【生検】 鼻腔内の生検。これが確定診断になる!

はじめに生検とは?

生検とは腫瘍の一部を摘み取ったり、針を刺したりして、顕微鏡で観察する検査方法のことである。この検査方法では腫瘍そのものを見るため、腫瘍であることを確定する方法にもなる。

注意点として、鼻の生検は出血が多く出ることで有名なため、必ず『血液凝固検査』という出血時に止血する力がその子にあるかを確認する検査をしておく必要がある。

方法は大きく分けて2つある。

生検のやり方

①鼻咽頭からの生検

すなわち、口から内視鏡を入れて、喉元から鼻へアプローチする方法だ。

病変部近くまで、内視鏡を持ってきたら鉗子で摘まみ取る。

あるいはサイトブラシというブラシで、擦り取る。 

多くの文献ではサイトブラシによる生検は腫瘍の表層しか取れないことが多く、誤診の原因となるためオススメされていない。

 

②外鼻孔からの生検

これは鼻の穴から直接ストローを挿入し、吸引してくる方法だ。

診断的中率は97%と高く、非常に有用性の高い検査方法である。

ポイントとしては脳の損傷を避けるために、どこまで挿すかを予め決めておくことである。

 

生検の評価方法

腫瘍と炎症の鑑別ができるのだが、具体的な鑑別方法は鼻腔内腫瘍の話から逸脱し、めっちゃ長くなるので、割愛させてもらう。

つまり、生検を行うことによって鼻腔内腫瘍と先ほど述べた鼻炎を鑑別できるのだ。

 

【治療法】 鼻の中にある腫瘍ってどうやって治すねん

治療法に関しては

QOL向上を目的とした延命治療で行くか、

根治を目的としたガチンコ療法で行くかで大きく治療方針が変わってくる。

QOL向上を目的とした延命治療

鼻腔内腫瘍では鼻が詰まったり、鼻血が出たりと犬のQOLを下げる要因が多く存在する。根本治療を行わず、これらの要因を取り除いてあげるのもとてもいいチョイスだと僕は思う。

 

②根治を目的としたガチンコ療法

根治を目指すためには腫瘍を完全に取り除かなければならない。

ただし、できている場所が場所なだけに外科的に取り除くのは難しい。

外科的に行ったとしても、鼻が大きく欠損しとても可哀相な外貌となるため、僕はいやだ。

また、骨浸潤がおきている場合は根治が非常に難しくなることも頭に入れておかなければならない。早期治療を開始し、局所浸潤を抑えることが根治療法のネックとなる。

主な根治療法の方法としては放射線治療抗がん剤である。

鼻腔内腫瘍については放射線治療が一般的になっている。

ただし、放射線治療はみなさんご存知の通り、放射線による障害が起きる。

抗がん剤においても同様に副作用が有名だ。

これらの副作用は動物の体にとって非常に重大な負担となることを覚悟していてほしい。そして、根治する保証がないことも必ず留意して頂き、治療に臨んでほしい。

 

【さいごに】

今回は鼻腔内腫瘍の原因、症状、診断方法、治療法について説明した。僕自身、腫瘍学にとても興味があり、少々細かいところまで書いてしまった点については反省している。

ただ、これらの知識については知っていて損になることはないはずだ。自分の知識を高めることで、治療の意義を理解でき、担当医の力量を判断することもできるようになる。

僕自身、『もう獣医に治療方針を任せっぱなしの時代は終わった』と思っている。

飼い主側もしっかりと知識を持って、愛犬とともに病気と闘っていってほしいと思う。

短頭種気道症候群って何?徹底解剖してみた!

今回は『短頭種気道症候群』について説明する。

短頭種は上部呼吸器(鼻、喉頭、気道)が生まれながらにして呼吸しづらく、それにより様々な症状を示すことがある。構造上の問題を明らかにしていこうと思う。

 

【目次】

 

【うちの子は?短頭種の犬種って?】

短頭種とは字の如く”頭(鼻)が短い”犬種である。

では、短頭種とは具体的にどの犬種を指すのだろうか?

実は、短頭種は明確に定義されていない。

一般的に短頭種と言われる犬種とは

ブルドッグフレンチ・ブルドッグペキニーズ、パグ、キャバリア、シー・ズーマルチーズなど

 

短頭種の構造

短頭種の構造的な特徴として

①鼻の穴が小さい

②気管が細い

③軟口蓋が通常の犬よりも長い

喉頭の強度が弱くペコペコとへこむ

などがある。

この4つの特徴を次に述べていこうと思う。

 

まとめ① 短頭種って?

短頭種とはパグ、ボストン・テリア、キャバリアなどのことをいう

短頭種の構造は主に4つの特徴を挙げられる

 

【短頭種に特徴的な構造って?】

 ①外鼻孔狭窄

【概要】

外鼻孔とは”鼻の穴”であり、それが狭窄つまり”狭くなる”ということである。短頭種の特徴的構造の中で唯一外から見てわかる病変である。

通常、鼻の穴はコンマ型になっているが、外鼻孔狭窄を引き起こしている犬の鼻の穴は直角型になっている。

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【原因】

こうなる原因として、厳密に明らかにはされていないが長年の品種改良が影響していると考えられている。

【症状】

外鼻孔狭窄が起こると、鼻をつままれているような状態になっているため、息がしづらくなる。症状として、一生懸命呼吸して見えるような『努力性呼吸』が見られるようになる。

犬は人間と違い、口呼吸というものが原則としてできない。鼻が詰まるというのは非常に苦しいものになるのだ。

努力性呼吸が継続すると、十分に呼吸ができないことによる『呼吸困難』が起こる。

呼吸困難が継続されると、胸腔内の圧が極端に低くなる。これにより、場合によっては肺に水が溜まる『肺水腫』になることがある。

肺水腫とは肺胞内に水がたまり、空気の交換ができなくなってしまう病気で命に関わる疾患である 。イメージとしては溺れているような状態だ。

【外鼻孔狭窄かを確かめる方法】

・鼻の穴が直角になっているかをみる

・鼻の前にティッシュを置いて、呼吸ができているかをチェックする

以上の2つでおおよその確認ができるだろう。

【治療法】

重篤度にもよるが、一般的には外科的な矯正がオススメされる。

 術式については執刀する獣医師によって異なるため、詳しくは記述しない。

簡単に述べると、鼻の穴を切開して拡げてあげる手術である。

 

②気管低形成

【概要】

気管低形成とは気管が先天的に十分に形成できず、細くなっている状態のことをいう。f:id:otahukutan:20180918180708j:plain

【原因】

先天的な形成不全であり、これも品種改良によるものと考えられる。

【症状】

気管が細いということはつまり、空気の通り道が少なく、イメージとしてはストローで呼吸しているようなものだ。体に必要な量の空気を吸おうと思えば、それだけ呼吸するための筋肉を動かさなければならなくなる。呼吸筋が疲弊してくると、『吸気困難』に陥る。

【治療法】

治療法としては姑息的なものしかなく、早期の閉塞解除治療を行う。

 

③軟口蓋過長

【軟口蓋とは?】

 ざっくり説明すると鼻と口を分けているもので、息を吸うときは軟口蓋が下がって口腔を塞ぐ。ご飯を飲み込む時は軟口蓋が上がって鼻道を塞ぐ。

【概要・原因】

短頭種は軟口蓋が長いために吸気時に下がると、そのまま気道側へ吸い込まれ、気道を塞いでしまう。これにより、息がしづらくなり、『呼吸困難』を呈する疾患である。吸い込まれた軟口蓋は刺激され、腫れたり、炎症を引き起こす。

【症状】

・息を吸うときにゴロゴロと音が聞こえる

いびきをする

・呼吸をしづらそうにしており、呼吸が速い

これらの症状が見られた場合、本疾患を疑うべきである。 

【治療法】

本疾患は軟口蓋が長いことが原因で起こっている疾患であるため、治療としては軟口蓋を短く切除する外科的治療が勧められる。

ただし、治療を行ってもいびきなどが治る可能性は50%程度と言われている。短頭種の呼吸器疾患は軟口蓋過長以外に複数の疾患が絡んでいることが大きく、この手術だけで完治させるのは難しい。

 

喉頭虚脱

喉頭とは?】

喉頭とは気管の入り口に存在し、軟骨(喉頭蓋軟骨、甲状軟骨、披裂軟骨、輪状軟骨)によって形が保持されている。ここでは誤嚥防止発声の役割を果たしている。

 【概要・原因】

前述した①〜③の疾患により、持続的な気道の陰圧によって喉頭が形を保持できなくなり、潰れてしまう疾患である。

病態の重篤度によってステージ分類がされている。

ステージⅠ:喉頭小嚢の外転する

ステージⅡ:披裂軟骨の楔状突起が内転し、喉頭口腹側を塞ぐ

ステージⅢ:披裂軟骨小角突起の硬度が低下し、内側へ落ち込む

【症状】

息を吸うときに『ヒューヒュー』と高い音がする。

喉頭が狭くなっているため、笛のように音が聞こえるのではないかと考えられる。

【治療法】

 喉頭の構造物が強度を失うことで、喉頭を塞いでいるので、塞いでいる箇所を外科的に切除し、気道を確保してあげる。

 

【お家で診断できる短頭種気道症候群のスコア表】 

ある論文で書かれているスコア表を引用している。

以下の項目に該当するかをお家でも確認できるので、ぜひ活用して欲しい。

スコア0:呼吸に関しての症状が出ていない

スコア1:軽いいびきや息を頑張って吸っている様子がたまに見られる

スコア2:いびきをして、少し呼吸が速い。また、息を吸いづらそうにする

スコア3:いびきがひどく、呼吸もかなり速い。常に息を吸いづらそうにする

スコア4:舌が青紫色になっている。息していない

 

【さいごに】

今回は短頭種の気道症候群について説明してみた。

短頭種はあの可愛い鼻を手に入れたと同時に、快適な呼吸がしにくい仕様になっている。個人的には手術で改善できるものが多いため、そこまで重篤な疾患ではないような印象がある。ただ、手術には麻酔が不可欠なため、100%安全というものは存在しない。その点だけを留意して頂き、獣医師の診断を聞いてもらえたらと思う。

 

 

うんちで分かるペットの健康状態

今回は『うんち』について説明する。

ペットのうんちは飼い主にとって、見る機会が多く、健康状態を把握する重要なファクターになっている。うんちの状態からペットの体内でどんなことが起こっているのかを説明していこうと思う。

【目次】

 

【形と固さで分かること】

形と固さはうんちに含まれる水の量で決まる。

下痢

下痢はご存知の通り、水分を多く含んだうんちである。

下痢は小腸性下痢大腸性下痢に分類される。

小腸性下痢

小腸は栄養吸収を主にしている臓器である。小腸で何か異常が出た場合、一番に出てくる症状として『体重の減少』が挙げられる。小腸で栄養が吸収できないので、体重が減るというのは当たり前である。また、小腸で出血がある場合は出血した血が消化液によって変化し、黒っぽい色になってうんちとともに出てくるのが特徴的だ。詳しく説明すれば、血液中に含まれているヘモグロビンが消化液によって変性し、黒褐色を呈する。

 

大腸性下痢

大腸は水分の吸収を主にしている臓器である。大腸で何か異常が出た場合、一番に出てくる症状として『粘液便』が挙げられる。ゼリーみたいなうんちが出てくる時は大腸性下痢を疑うべきである。小腸と異なり、栄養吸収に関係の薄い臓器なので体重の減少が見られない。また、大腸で出血があった場合は真っ赤な血が出てくる。

パルボウイルス感染症では水っぽい大量の赤色便が出る。

 

未消化物がある

消化や吸収がうまくできていない時はうんちの中に消化せずに出てきたフードが目立つ。胃や小腸で消化吸収がうまくいってないと思われる。

 

まとめ① 下痢と未消化物について

下痢:小腸性と大腸性がある

未消化物:消化吸収がうまくいってない

 

【うんちのにおいで分かる体調】

うんちのにおいでもある程度、体の中で起きていることが分かる。

酸っぱい臭い

うんちが酸っぱい臭いがする場合、それは脂肪がうまく吸収できていないことが疑われる。脂肪吸収不良が起こる原因として一番に考えられるのが膵外分泌不全だ。膵臓から出るリパーゼという酵素は脂肪を分解し、吸収しやすい状態にしている。その膵臓から消化液が出なくなると様々な症状が出てくる。

膵外分泌不全ってなに?

膵外分泌不全とは膵臓から消化管に分泌される消化酵素の不足によって生じる栄養失調性の疾患である。慢性の膵炎から続発することもある。消化酵素が出ない病気なので、特徴的な症状としては『痩せてくる』、『下痢になる』この2つである。食べているのに下痢になるので、うんちは大量にして、酸っぱい臭いがする。

 

腐った臭い

腐った臭いは主に腸内細菌の異常によって起こっている。そのため腸炎などで腸内細菌が崩れている時に腐った臭いのうんちが出るのだ。

 

まとめ② 酸臭便と腐敗臭便

酸臭便:脂肪の吸収不全が原因。膵臓の調子がおかしい可能性大

腐敗臭便:腸内細菌の異常が原因。腸で炎症が起きている可能性大

 

【色で見分ける病魔の影】

茶色便

通常の健康なうんちは茶色をしている。

あれは胆嚢から腸管へ出てくるビリルビンが腸内細菌によって、ウロビリン、そしてステルコビリンに還元されているために起こる。うんちが茶色ということは正常にビリルビンが排出され、腸内細菌も整っていることの証だと言えるだろう。

 

黒褐色便

黒褐色便になるのは主に上部消化管で出血が見られる時である。

なぜ上部消化管で出血があると黒色になるかというと、腸管の最初の方で出血した場合、その血液は消化液によって変性され黒っぽくなってしまうからだ。

主な原因として

鼻血の嚥下、重度の胃炎や腸炎胃潰瘍、腫瘍、腸捻転などがある

黒褐色便が見られた場合、早急を要する疾患が多いため、すぐに病院に連れて行くことをオススメする。

 

赤色便

大腸性下痢の項目でもお話ししたが、真っ赤な血がうんちに混じっている場合は大腸などの肛門付近の出血が考えられる。ほとんどの場合がうんちの周りにこびりつくように血が付いているだろう。少量であれば特に問題はない。

 

灰色〜黄白色便

この色が出るのは脂肪の消化吸収が上手くいっていない時である。

つまり、胆汁や膵液が出ていないということである。

膵外分泌不全症胆管閉塞による胆汁排泄障害が疑われる。

膵外分泌不全については上記を参考にして欲しい。

胆管閉塞ってなに?

 胆石が胆管に詰まったり、胆管壁に炎症が起き、管が肥厚してしまった時に起こる。また、わかりやすい症状としては黄疸が見られることが特徴である。白目や皮膚に黄疸が見られ、うんちが灰色になっている場合は胆管閉塞を強く疑うべきである。

 

黄色味の強い便

うんちが茶色を呈するのは胆嚢から胆管を通して腸管へ排泄されたビリルビンが腸内細菌によって還元されるために起こるということは先ほど説明した。

重度の腸炎腸内細菌が大きく崩れた場合ビリルビンの還元が上手くいかずに黄色味のうんちが出る。

 

緑色便

緑色の便はほぼ胆汁の色と考えていいだろう。そもそも胆汁というものは十二指腸にある十二指腸乳頭と呼ばれる場所から分泌されている。

腸管は胃→十二指腸→空腸→回腸→盲腸→結腸→直腸の順にできている

ご覧の通り、十二指腸は腸管のだいぶ上の方に存在している。

そこで分泌された胆汁がうんちとなって出てくるということはかなり消化管の通過時間が短くなっている証拠である。

 

まとめ③ うんちの色でわかる疾患

茶色便:胆汁の排泄、腸内細菌ともに正常で健康な便

黒褐色便:上部消化管での出血や鼻血の嚥下を疑う

赤色便:下部消化管の出血や肛門周囲の出血を疑う

灰色〜黄白便:脂肪の色が出ている。膵外分泌不全、胆管閉塞を疑う

黄色味の強い便:重度の腸炎や腸内細菌の崩れを疑う

緑色便:消化管の通過が早くなっていることを示している

 

【さいごに】

うんちは健康のバロメータと言われているほどペットの健康を知る上で大切なものである。 また、うんちはトイレ掃除をする時に目に付きやすく、見つけやすいため早期発見が可能になる。わんちゃんやねこちゃんは自分でモノを言うことができないため、僕たち人間サイドがしっかりと健康状態を斟酌してあげることがペットの健康維持につながることだろう。

 

 

 

 

 

 

『うちの子が尿石症⁈ 種類別に詳しく解説』

今回は『尿石症』についてお話ししていきたいと思う。

皆さんは尿石っていろいろ種類があるのを知っているだろうか?

尿石の成分別に分けた4種類の尿結石を比較しながら、紹介していきたいと思う。

 

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【目次】

【尿石症ってなに?】

尿石症とは

 尿石症は腎臓や尿管、膀胱、尿道などの尿路系と呼ばれる場所に石ができ、その石によって粘膜が傷つけられたり、おしっこの通り道が塞がったりすることで起きる病気。

 

じゃあ、尿石って何なん?

尿石は尿中の水に溶けている物質が剥がれた粘膜や細菌に絡まって大きくなったものである。

 

【尿石ってなぜできるの?】 

尿石のできる原因として主に3つある。

①尿の成分に異常が出ている場合

前述の通り、尿石とは尿に溶けている物質が集まって大きくなったものなので、尿量が減るとその分集まりやすくなる。そのため、脱水が起きている場合にできやすい。

また、その物質が集まりやすい尿pHがあり、尿酸化剤やアルカリ化剤などを摂取している場合にも尿石はできやすい。

 

②食事に問題がある場合

ミネラルや塩分の偏った食事をしている場合、尿中に溶けている物質の量も偏って増えるので尿石ができやすくなる。

 

③尿路感染症がある場合

尿路感染とは腎臓、尿管、膀胱、尿道のどこかで細菌などの感染が起きていることをいう。

尿路感染症になると粘膜が炎症によって剥がれており、細菌によって尿のpHが変化しているために尿石ができやすくなる。

ブドウ球菌などのウレアーゼを産生する菌では尿素をウレアーゼによって分解し、アンモニアが増加するので、pHが上昇し、アンモニアイオンが増加するため、リン酸アンモニウムマグネシウム尿石が作られる。 

 

【まとめ①】 尿石ができる理由3つ

①脱水などで尿量が減る+尿酸化剤やアルカリ化剤を服用している

②塩類のバランスが崩れ、偏った食事をしている

③ウレアーゼ産生菌による尿路感染症

 

【種類別、尿石の作られ方】

4種類の尿石について説明するが、長ったらしくて時間が惜しい方はまとめだけでも目を通してもらえると幸いだ。→ まとめ② 4種類の尿石について

①ストバイト尿石(リン酸アンモニウムマグネシウム

 ストルバイト尿石は犬の場合と猫の場合でできる原因が異なる。

犬の場合

犬の場合、尿のpHがアルカリ性に傾く時によくなる。

では、アルカリ性に傾き時はとはどんな時か?

それは、『尿路感染』をしている時である。

尿路感染をしている時、細菌が産生するウレアーゼと呼ばれる酵素によって、尿素アンモニアに変わる。アンモニアアルカリ性なので、尿はアルカリ性に傾いてしまう。

 

猫の場合

一方で、猫の場合は尿路感染がなくても発症する。

猫では『キャットフード』が主な原因となる。

低ナトリウム、高マグネシウムのキャットフードを食べている猫ではストルバイト尿石を作りやすくなる。マグネシウムを多く摂ると、尿石ができるためである。

ちなみに牛でも穀物多めの飼料を与えて、飼育するとストルバイト尿石になるよ(笑)

穀物にはマグネシウムが多く含まれているためである。

 

②シュウ酸カルシウム尿石

シュウ酸カルシウム尿石は『雄』で多く見られる。

というのも、肝臓で作られるシュウ酸塩はテストステロンが関与しているためである。逆に女性ホルモンであるエストロゲンクエン酸の尿中排泄を増加させ、シュウ酸塩を作るのを邪魔するのだ。

また、シュウ酸カルシウム尿石ができる犬は人が食べるものを食べていることが多いという報告もあるため、犬には犬用のご飯をあげるようにしよう。

なりやすい犬

M.シュナウザーヨークシャーテリアシーズー

なりやすい猫

ペルシャヒマラヤンバーミーズ

 

③尿酸塩尿石

尿酸塩尿石とは尿中の尿酸とアンモニウムイオンの濃度が 高くなった時に起こる。

尿酸が高くなるのは肝臓の力が弱まった時である。

肝臓では尿素回路というアンモニア尿素に変換させる働きをしているのと同時に、尿酸は酸化させアラントインという物質に変換させてもいる。

こういうわけで、肝臓の力が弱まるとアンモニアと尿酸が増えてしまうのだ。

 

これにもなりやすい犬種がある

これはなりやすい犬種が決まっている。

ダルメシアンイングリッシュ・ブルドッグだ。

特にダルメシアンの尿酸塩尿石は有名である。

この2つの犬種はかなりの確率で尿酸塩尿石になるので注意が必要である。

理由としては

ダルメシアンは元々先ほど話した肝臓での尿酸をアラントインに変換する能力が著しく低い。そのため、尿酸が尿中に多く含まれる。おまけに腎臓で尿酸を吸収する能力も低いため、尿酸塩尿石になりやすいのだ。

 

④シスチン尿石

極めてレアな尿石である。これは遺伝性の病気で、シスチナーゼの遺伝的な欠損が原因と言われている。

この病気は犬の雄で起きる。

よくなるのはダックスイングリッシュ・ブルドックである。

 

【まとめ②】 4種類の尿石について

ストルバイト尿石:犬は尿路感染、猫はご飯が原因

シュウ酸カルシウム尿石:男性ホルモンが関与。雄でなりやすい。

尿酸塩尿石:ダルメシアンで好発。肝臓にも気をつけて!

シスチン尿石:遺伝性疾患。ダックスとブルドックで注意!

 

【飼い主にできること】

最後に飼い主にできることを話したい。以上の説明からご理解して頂けた通り、尿石症の原因のほとんどは『食べ物』である。

ストルバイト尿石では猫の高マグネシウム含量食であるし、シュウ酸カルシウム尿石では人の食べ物を食べている場合に起こることもある。

肝臓が弱ったり、尿道が感染したりといったことは日々の生活でなかなか見つけるのは難しい。しかし、食べ物に関しては自分たちで制御できるものなので、可能な限り健康的な食生活を目指して欲しい。